中国の正月である「春節」が近づいてきた。
今年は1月25日で、中国ではもう仕事どころではなくなっているだろう。
いつもより1日遅れとなったきょうの天神橋筋商店街詣で、どうせならひと足早く中国流の年越しをしようと、どこに行こうかと考えた。
そのとき、天4(天神橋筋四番街)に中国料理の店があることを思い出した。
本格的な中国料理の店に1人で入るのはそれなりに勇気がいるが、あえて「年越しなんだから」と考えて腹をくくった。

天3から北に向かい、「夫婦橋(めおとばし)」を越えると天4になる。この橋にはさまざまな物語があるらしいが、長くなるのでここでは触れないことにする。橋の下に川はなく、欄干だけが復元されている

中国料理の店「上海食苑」。間口は狭いが、一目で本格的だと感じられる

店内は赤が積極的に使われていて、中国らしい雰囲気になっている

中国の年越しに欠かせないのがギョーザだ。中国ではゆでたギョーザが一般的で、注文したのも「水餃子」(税込み600円)だった

ギョーザのあんは豚肉とキャベツが中心になっている。白菜でなくキャベツであるところが珍しい。理由を聞いたがよくわからなかった

そして、本日のメインディッシュは「揚げ魚の甘酢あんかけ」(税込み900円)。中国語では「余」と「魚」の発音が同じで、「年年有余(毎年お金が残る)」の願いを込めて年越し料理として魚を食べる。その習慣にあやかった。この料理を1人で食べるのはきつかったが、「魚」をたくさん食べると「余」もたくさんあるかなと思ってひと頑張りした

酒は中国の南部を中心に飲まれている「紹興酒」(税込み420円)にした。中国の全土でいうと、紹興酒は日本で思われているほどポピュラーではない。何でもないような突き出しが、けっこういい働きをしてくれた

注文したものをずらっと並べた。中国の年越しのしきたりはかなり細かく、料理の品数にもこだわりがある。もちろんこれよりずっと多い料理を並べる
店で応対してくれたのは若い女性だった。
言葉から中国人であることがすぐにわかったので、中国語を交えて少し話をした。
「中国のどこの人?」
「河南省です。開封という町の出身です」
「へえ、開封といえば古都として有名だよね。もうすぐ春節だけど、ふるさとには帰らないの?」
「時間が取れなくて帰れないんです」
「そう、それは残念だね。ところで、料理人はどこの人?」
「同じ河南省です。料理人は私の父です」
「えっ、そうなの。じゃあ、ふるさとに帰らなくてもいいじゃない。中国では両親のいるところがふるさとだっていうもんね」
「そうですけど、中国と日本の年越しは違うし、親戚や友達にも会いたいんで、帰りたいという気持ちは強いですよ」
思いがけず、中国の人の春節への思いの一端に触れることができた。