けさ、出かける支度をしているとき、ふと気になって部屋の窓から東の空を見た。
日が昇ろうとしていた。
そして、すじ雲が何本もかかっていた。
すじ雲はごく一般的な雲だが、ここまできれいで多くの平行線を描くことは珍しい。
部屋の窓から見た東の空。午前7時16分撮影
この雲を見て、私は「地獄から極楽へ昇る階段のようだ」と思った。
芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』では、お釈迦さまの慈悲によって地獄から極楽へ昇ろうとしたカンダタが、自分だけ助かろうとして、もとの地獄へ落とされてしまった。
それは昇る手段が蜘蛛の糸という頼りないものだったからだ。
けさの階段なら、カンダタだけでなく、多くの人がともに昇っていける。
自分のことしか考えないカンダタも極楽へ行けただろうか。
それとも、同じように利己的な心をお釈迦さまに見抜かれて、再び地獄に落ちただろうか。
この雲の階段が短い時間で消えてしまったところを見ると、やはり…。