思い出はモノクロームその2 旅館「明楽」と「てんのじ村」

私の部屋から地下鉄の動物園前駅へ行く途中に、「こんな建物がまだ残っているんだ」と思うような旅館がある。

その名は「明楽」。

すでに旅館としての営業は終えているようだが、できることなら一晩でもいいから泊まりたいと思うたたずまいだ。

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旅館「明楽」。この旅館にはどんな人が泊まり、どんな物語があったのだろうか

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玄関の上に掛かる看板

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玄関の近くにある宣伝文句。時代を感じさせる文言だ

そして、旅館の隣には「てんのじ村記念碑」が立っている。

調べてみると、てんのじ村と呼ばれたこの一角は、かつて長屋が並ぶ街だった。

そこに昭和の初めごろから芸人が住み始め、終戦のころまで多くの芸人でにぎわった。

ミヤコ蝶々海原お浜・小浜といった全国的な有名芸人も、ここで暮らしたことがあるという。

記念碑の題字は漫才の父と称される秋田實の筆によるものだ。

身近で何気ない場所に驚くような物語がある。

西成の奥深さの一端に触れたような気がした。

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てんのじ村記念碑。阪神高速の入り口の脇に立っている

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記念碑の建立に賛同した個人、団体の名が石柱に刻まれている。その中に大阪の民放4局が並び、今に続く放送局と芸人のつながりを物語っている