駅の改札を出てすぐのところに「つるまる饂飩(うどん)」があり、手軽に朝食が食べられるので時々寄る。
食べるのはたいてい「コロッケうどん」だ。
345円はかなり安いといえるだろう。
コロッケといえば忘れられない思い出がある。
私は東京の大学に進学し、岡山の田舎から花の都へ出て行った。
見るもの聞くもの新しいものだらけだったが、そのうちの1つが「コロッケそば」だった。
大学からの帰り道、私は初めて立ち食いそばの店に入り、カウンターの前に立った。
そばには天ぷらを載せるものだと思い込んでいた私は、「天ぷらそば」と注文した。
エビの天ぷらを注文したつもりだったが、出てきたのはかき揚げだった。
それを食べているときふと隣を見ると、サラリーマン風の男性がコロッケの載ったそばを食べていた。
そばに載せるのは天ぷら、油揚げ、天かす(揚げ玉)、卵、かまぼこ、ネギだけだと思っていた私はびっくりした。
ちょっと大げさにいえば、東京の食べ物に衝撃を受けた。
こんな食べ方があるのかと。
翌日、同じ店に行き、コロッケそばを注文した。
コロッケの衣が汁を吸って柔らかくなり、中のジャガイモもとろけるような食感になる。
普段のコロッケとは別物だと感じた。
「やっぱ東京はすげえところじゃ」と心の中でつぶやいた。
それ以降、コロッケそばは立ち食いそばでの私の定番メニューとなった。
今は関西で暮らしているので、そばがうどんに変わったが、麺と汁とコロッケの絶妙なコンビネーションは変わらない。
つるまる饂飩のコロッケうどん。コロッケをそっと浮かべるようにして、徐々に汁が染みていくのを見るのも楽しい