日本で「上海蟹」呼ばれる秋の味覚。その名にある上海の普通の街で上海蟹がどう扱われているのか気になった。上海の庶民の街を代表する豫園周辺へ行ってみた。
上海有数の観光地「豫園」。そこから東に向かって少し歩くと「四牌楼」に着く。
狭い路地の両側約100メートルにわたって小さな食堂が並んでいる。
私が訪ねたのは2010年の10月中旬、上海万博終盤の週末の四牌楼はかなり混雑していた。
1匹10元(当時のレートで約120円)、2匹なら15元という食堂を見つけて立ち止まる。
すると、おばさんが寄ってきて、「どれでも好きなのを選んでよ」と言う。
せっかくだからと大きめの蟹を2匹選び、蒸してもらって食べる。
悪くない。
この店の上海蟹の扱いは普段と同じ料理の付け足し程度で、注文する客は少ない。
上海の人たちの生活の中での上海蟹も、こうした存在なのだろう。
店を出て、四牌楼を少し離れると、道路脇で上海蟹を売っている人たちがいた。
おばさんが声を掛けてくる。
おばさんの前には発泡スチロールの箱がいくつか並び、その中に上海蟹が入っている。
値段を聞くと、「安いのが1匹9元、一番高いのは1匹15元よ。あんた日本人でしょ。高いの買ってよ」と売り込んでくる。
1匹15元じゃ、さっきの食堂より高い。
「もっと安いのはないのかよ」と言うと、隣のおじさんが、「こっちは1斤(500グラム)10元だ」と話に割り込んでくる。
よし、買った。
結局、9元で5匹買い、味を比べようと1匹15元のおばさんの蟹も2匹買った。
どちらも南京産だと言っていた。
買い終わってふと近くのコンビニの入り口を見ると、陽澄湖産上海蟹のギフト券の広告が貼ってあった。
中国で縁起のいい数字とされる8にちなんで、8匹が1セットで一番高いのは2088元だ。
1匹250元を超える計算になる。
路上の店の1匹2元足らずの上海蟹と、贈答用の250元を超える上海蟹。
同じような蟹でも値段には100倍以上の開きがある。
上海蟹は不思議な国・中国を象徴する食べ物なのかもしれないと思った。