上海の秋を代表する味覚「上海蟹」。
聖地は江蘇省の陽澄湖だとしても、やはり地元で蟹を買いたい。
そう思って、上海一の水産市場である「銅川路」へ2010年の10月下旬に行った。
銅川路は上海市の北西部にあり、300メートルほどの道路の両側に魚介類を売る店が軒を連ねている。
秋から冬にかけて銅川路の主役となるのが上海蟹だ。。
通りを歩いていると、「上海蟹(このエリアでは大閘蟹の呼び方が一般的)どうだい。見るだけならただだよ。見て行ってよ」と声を掛けられる。
店の数が多くどこで買おうかと迷うが、なんとなくよさそうだなと思った「賢麗水産行」という店に入った。
店員の聶歓さんに話を聞いたところ、この店では毎日、陽澄湖から蟹が運ばれてくるという。
いきなり「銅川路の上海蟹の多くは産地偽装だといわれているけど」と聞くと、聶さんは「おいおい、冗談言っちゃ困るよ。うちはそんな商売はしないよ」と、水槽から蟹を取り出した。
「これがその証拠だ」と指さされたので蟹を見ると、はさみにタグが付いていた。
中国政府の関係機関のお墨付きを示すタグで、確認のための電話番号と携帯メールの番号が記載されている。
このタグすら偽物だという話もあるが、中国でこの手のことを疑い出したらきりがない。
この店で上海蟹のオスとメスを1匹ずつ買った。
値段は2匹合わせて65元(当時のレートで約800円)だった。
そして、すぐ近くのレストラン「天鴻酒家」に直行した。
日本のレストランではまず考えられないが、ここのレストランは魚介類の食材の持ち込みOKだ。
銅川路で新鮮な上海蟹を買って、すぐに食べる。
これも上海蟹の楽しみ方の1つだ。
天鴻酒家では持ち込んだ食材の重さと調理法によって値段が決まる。
私は2つの料理を頼み、48元(約600円)払った。
上海蟹の値段を合わせても、中心市街地のレストランで食べるよりかなり安い。
ついでに上海蟹と相性がいいとされる紹興酒も飲んで、ほろ酔い気分で銅川路を後にした。