きょうも旧暦の年越しにこだわった。
中国の年越し料理は、それぞれの地方に特色があり、食べるものもバラエティーに富んでいる。
その中で欠かせないのが魚の料理だ。
これには「年年有余」、毎年お金が残るという願いが込められている。
中国語では「余」と「魚」の発音が同じであるところから、「年年有魚」として、魚を食べて年を越し、ゆとりある生活への願掛けをするというわけだ。
旧暦の正月も2日になったが、遅ればせながら私もきょう魚を食べた。
中国料理の店で魚を食べるのは難しいので、食べたのはべたな日本料理、それも「尾頭付き」のサンマだ。
きょうの夕食。ごはん、みそ汁にサンマの塩焼き、それに卵焼きと辛子明太子。われながらいい取り合わせだ。いや、塩分の取り過ぎだな
大衆的な食堂で「尾頭付き」を食べるなら、サンマが手っ取り早い。もちろん、鯛であるに越したことはないが、ぜいたくは敵だ
昔の銭に似ているからギョーザを食べ、「年年有余」に引っかけて魚を食べる。
考えてみれば、たわいない発想だ。
しかし、この風習には中国の人たちの人生観や処世術が反映されているように思う。
広大な国土と巨大な人口を持つ中国では、昔から戦乱が繰り返されてきた。
その都度、大きな犠牲を強いられたのが中国語でいう「老百姓(庶民)」だ。
「自分の力ではどうにもならないことがある。天の助けを借りるときが必ずくる」、そんな思いが中国の人たちの心に染み付いている。
そして、どんなことが起きても何とかするというたくましさも持ち合わせている。
私の10年余りの中国での生活でも、「なんでこうなるの」と思ったことは数え切れないほどある。
「郷に入っては郷に従え」は中国のことわざだ。
私はその郷から離れることになったが、郷で従ったことは忘れていない。