けさ、まだ暗いうちに家を出た。
これだという狙いはなかったが、通天閣に新年のあいさつをしなければと思い、どうせなら赤く染まった空と絡めようと朝早くから動き始めた。
ところが…。
通天閣へ向かう途中、幹線道路を横断する際にあべのハルカスを見たら、背後の空が赤く染まっていた。
「これを見て素通りするわけにはいかない。通天閣は日を改めよう」と、道路の脇に三脚を立てた。
東の空の色は見る見るうちに薄くなり、朝焼けは終了となった。
時計を見ると、午前7時ちょっと前だった。
「これならまだ間に合うぞ」と思った。
天王寺動物園の上の歩道から通天閣を見たら、西の空の底に漂う雲がうっすらと赤く染まっていた。
さらに足を速め、池に架かる橋に着いて通天閣を見上げると、雲の赤さが残っていた。
それを見て、「二兎を追う者は一兎をも得ずというが、きょうは二兎を追って二兎を得たな」と思った。