夜の工場と鉄へのあこがれ

先日、夕方から夜にかけて浜寺水路を訪ねた。
当初、運河を撮るつもりはなく、狙っていたのは夜の工場だった。
浜寺水路の西の埋立て地には、大規模な工場がずらっと並んでいる。
私は鉄が複雑に組み合わされて稼働している工場を見るのが好きだ。
特に夜は明かりに照らされて幻想的でグッとくる。
テレビ東京系列で放送されている深夜ドラマ『孤独のグルメ』でも、主演の松重豊が同じようなことを言っていたので、こうした感情は多くの男性に共通したものなのだろう。
 
鉄に引かれ、あこがれる理由を考えてみた。
鉄は硬く強い。
人類が鉄を利用するようになってから、武器は飛躍的な進歩を遂げた。
男は本来、戦う生き物で、強くありたいと願う。
その本性が強さの象徴である鉄へのあこがれを生んでいるように思う。
 
鉄へのあこがれといえば、私には幼い日の思い出がある。
小学校の2年か3年のころ、当時、一世を風靡していた「鉄人28号」のプラモデルを父に買ってもらい、苦労して組み立てた。
それを持って遊びに出たとき、友達の1人が太い鉄の棒を持っていた。
それは電柱の足場だった。
昔の電柱、特に田舎の電柱はそのほとんどが木でできており、鉄の棒を打ち込んで電柱に登る際の足場にしていた。
どこで手に入れたのかはわからないが、友達はその足場の棒を持っていた。
私はそのなんでもない鉄の棒が欲しくてたまらず、友達に話を持ちかけた。
友達は「その鉄人28号と交換してくれるのならあげるよ」と言った。
私は悩んだが、鉄へのあこがれにあらがえず、鉄と鉄人の交換に応じた。
その鉄人28号のプラモデルは、箱に入った美品であれば今なら間違いなく「お宝」だ。
しかし、当時の私にとっては、なんでもない鉄の棒がお宝だった。
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工場を撮るのは大変だった。工場の周辺にはフェンスが張り巡らされ、中には入れない。フェンスの外からだと迫力がなくなる。ということで、撮影できた工場の写真は浜寺水路の対岸からのこの1枚だけだった
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工場の煙突の先から火が出ている。周辺が暗くなると火の明るさが際立つ