きのうの朝、普段より少し早く家を出て、近くの路地を歩いた。
数多くの猫が面倒を見てもらっている家の前に一匹の猫がいた。
その猫は水道メーターのふたと思われる鉄板の上で寝ていた。
そのとき、黒澤明監督の映画『用心棒』のあるシーンが頭に浮かんだ。
昭和を代表する映画スター・三船敏郎と水戸黄門役で知られる東野英治郎が演じる墓場でのシーンだ。
拷問で痛めつけられた三船敏郎を見て、東野英治郎が「生きているようにゃ見えねえぜ」と言う。
きのうの猫も、鉄板が戸板でその上に載せられた死体のように見えた。
私も東野英治郎と同じせりふを言いたくなった。
まあ、猫にしてみれば、冷たい鉄板の上で涼を取りながら寝ていただけだろうが。