きのうの夜、中村食堂を出て路地を歩いて帰った。
顔なじみの猫がいた。
トタンの壁の前にいることが多いので、私がトタンをもじって「タント」と呼んでいた猫だ。
少し前に飼い主に聞いて、本名が「ヒム」であることを知り、その後は「もうタントとは呼べないな」と思っていた。
しかし…。
きのうは定位置ともいえるトタンの壁の前にいた。
さびたトタンの前であたりに目を光らせたり、うとうとしたりする姿は妙に収まりがよかった。
その姿を見て、「おまえはやっぱり『タント』だ。これからもそう呼ぶことにしよう」と思った。