きょうの仕事帰りに、西成まで戻ってから、いつものように松乃木大明神へ行った。
しかし、猫の姿はまったくなく、「仕方ない。ちょっと遠くまで行ってみるか」と、飛田新地に近い路地まで足を延ばした。
そのあたりにも猫はおらず、歩き回っているうちに、「梅かな」と思う赤い花が目に入った。
赤い花は鉢に植えられた木に咲いていて、1輪だけだった。
花が咲いていたのは銭湯の建物の脇で、1年ほど前にも同じ花を撮ったことを思い出した。
花を撮っていると、一人のお年寄りがやって来て、私に話しかけた。
その人は銭湯の経営者だった。
「去年もこの花を撮っていましたよね」
「はい、これは梅の花ですか」
「いや、ボケの花です」
「思い出しました。ボケの花でしたね。去年も同じことを聞きましたね。ボケの花で『ボケ』をかましてしまいました」
「私も年を取って、鉢植えの花の世話ができなくなりました。ほったらかしです」
「確かに。去年は花がたくさんあったと思いますが…」
そんなおしゃべりをして、銭湯らしく風呂に漬かったように心が温まった。