きのう大和川で夕日の写真を撮ったとき、すぐ近くで1人の若者が釣り糸を垂れていた。
「何が釣れるんですか」
「スズキです。それにチヌも」
「それって高級魚ですよね。釣ったら売るんですか」
「ここは水がきれいじゃないんで、売ることなんてできませんよ」
あいさつがてら、そんな話をした。
若い釣り人は、熱心にルアーを投げ入れ、竿を操っていたが、当たりがくる気配はなかった。
私は「どうせ釣れないんだろうな」と冷ややかに見ていた。
ところが、夕焼けが終わりに近づき、私が機材を片付けようかと思ったころ、若者が「釣れました」と声を上げた。
急いで若者のところに行き、たぐり寄せられる釣り糸を見ていると、立派な白い魚が姿を現した。
「スズキですよ。スズキ。粘ってよかった~」と、若者はうれしそうに言った。
スズキは全長50センチ余りで、私の目には大物に見えた。
そして、若者は釣り上げたスズキをリリースした。
「釣ったんなら食べろよ。リリースするなら、ただの虐待じゃないか」と私は思ったが、釣り人には釣り人の考えがあるのだろう。
いずれにせよ、その場を立ち去る寸前に珍しいシーンを見ることができて幸運だった。