冬山で出合った「すいとん」の味

私は大学時代に山岳部に所属し、冬山にも毎年登った。

冬山で悪天に遭遇すると、テントの中で耐えるしかなくなる。

耐えるとはいっても、状況がそれほど厳しくない日は、寝袋の中で惰眠をむさぼれる楽しい日ではあるのだが。

 

そんな日の昼食のため、永谷園の「お好み焼きの素」を用意していた。

しかし、それで通常のお好み焼きを作っても大した量にはならないし、調理もけっこう面倒だ。

そこで私の同期の部員が「これを水に溶いて、みそ汁の中に入れれば『すいとん』になりますよ」と提案し、みんなで作ってみた。

それが意外なほどうまく、腹もかなり満たされた。

 

すいとんは戦中・戦後の食糧難の時代の食べ物で、私が学生だったころでも、食べる人はほぼ皆無だった。

そんな料理に冬の山の中で出合おうとは。

それ以降、すいとんは冬山の定番料理になった。

 

きょうの昼、そんな思い出のあるすいとんを作ることにした。

ところが、なんでもないはずの「山岳部流すいとん」に思わぬ落とし穴があった。

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落とし穴というのは、永谷園の「すいとんの素」いや「お好み焼きの素」が近所のスーパーになかったこと。ネットで調べたところ、販売は継続されているようだが…。仕方なく棚にあった日清の「たこ焼粉」を買った。それにともなって、卵と小えびも必要になった。味付けはワカメのみそ汁。全部合わせて税込み449円なので1回分なら100円程度だろう

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たこ焼粉をボールに入れ、卵と小えびを加え、水を混ぜ合わせる。焼くわけではないので、少し硬めに溶く

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湯を沸かし、溶いたたこ焼粉を適当な大きさに分けて入れる

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インスタントのみそ汁で味付けをする。これで出来上がりだ

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懐かしのすいとん。山で食べたものとはかなり違う。材料を工夫したが、味はどちらに軍配が上がるか難しいところだ。小えびが効いているものの、お好み焼きの素と違って粉にほとんど味が付いていないので、物足りなさを感じる