たかが缶コーヒー、されど缶コーヒー

きのうの仕事帰りに買った缶コーヒー

きのうの仕事帰り、西成に戻ってから帰りの道を歩いているとき、ふと脇に置かれた自販機を見たら、懐かしさを感じる缶コーヒーがあった。

それは「UCCミルクコーヒー」だった。

 

実は、上海で暮らしていた2010年に、この缶コーヒーの「歴史的事実」を知った。

この缶コーヒーは「世界初の缶コーヒー」だったのだ。

2010年といえば上海万博が開かれた年で、当時の仕事の関係で1970年の大阪万博のことを調べていて、その事実を知った。

大阪万博に出展し、その後普及したものの一つとして缶コーヒーが挙げられていた。

 

自販機にはUCCミルクコーヒーが3本並んでいた。

この缶コーヒーは定番ではありながらも、今となっては人気商品とはいい難い。

自販機で見ることもそれほど多くなく、3本も並んでいるのは珍しい。

「これは『たかが缶コーヒー、されど缶コーヒー』といえる商品だ。買わないわけにはいかないな」と思い、1本買って持ち帰った。

缶には「SINCE1969」と書かれている。1969年といえば大阪万博の前年だ。すでに50年を超える歴史があることになる

自販機で販売されていた「UCCミルクコーヒー」。1本80円だった

万博といえば再来年2025年に大阪で開催される。

この万博の開催が決定したのは2018年で、そのニュースを見て、私は「大阪で万博をやる意味があるのかよ」と思った。

 

というのは、上海万博のパビリオンを訪れたとき「なんじゃこりゃ」と思ったからだ。

私は1970年の大阪万博に1回だけ行った。

そのときは「うわ~、こんなものがあるんだ」という驚きの連続だった。

一方、上海万博の会場へは仕事の関係で3回足を運び、日本館、日本産業館、大阪館の日本関係の3パビリオンを訪れた。

そのとき館内で見たのは、主にCGを駆使した映像で、実物の展示に見るべきものはなかった。

 

これは大阪万博と上海万博の間の40年における技術革新の結果だといっていい。

1970年の大阪万博の時点では、最新の技術や将来のビジョンに触れるには、実物を見るかテレビをはじめとするメディアの情報に頼るしかなかった。

しかし、2010年の上海万博の時点では、パソコンを開けば、簡単に最新の情報が得られるようになっていた。

万博の会場で実物を展示しても目新しさはなく、経費がかさむばかりで、必然的にCGを駆使して抽象的な映像を流すしかなくなっていた。

そういうことだと思う。

「万博の使命は終わったな」というのが、私の正直な感想だった。

 

そんな上海万博から15年、大阪万博で何をやるつもりなのだろう。

わけのわからない映像を見るために何時間も並ぶなんて馬鹿げている。

縁あって大阪に住み、大阪府民、大阪市民にもなっている。

私が納めるささやかな税金でも、公費で造られる施設のビス1本くらいにはなるだろう。

大阪万博の成功を願ってはいるが…。