1カ月ほど前のことだった。
勤務先のマンションの住民さんが、「皆さんで召し上がってください」と言って、柿を30個ほど持って来てくれた。
その住民さんは、「これは渋柿ですから、そのままでは食べられませんよ」と付け加えるのを忘れなかった。
その柿は清掃担当の女性が分けて持ち帰った。
女性の一人は干し柿にしたということで、時々、その柿の状態が話題になった。
で、数日前、「まずまずの出来の干し柿になりました。味見をしてください」と私に1つ渡してくれた。
私は農家の生まれで、物心ついたときから秋のおやつは柿だった。
ある日、母の実家に遊びに行ったとき、いとこに騙されて渋柿を食べ、口がすぼまった。
それ以来、大げさにいうと、渋柿恐怖症になっている。
そして、干し柿は硬いだけで、わざわざ時間をかけて作るほどのものじゃないと思っていた。
ところが…。
もらった干し柿は、私の概念を覆した。
それは中がゼリー状で、甘みも十分だった。
「こんな干し柿があったのか」と驚いた。
憎き渋柿がうまいものに変身する。
昨今の生成AIも大した発明だと思うが、渋柿を干し柿にして美味にするという先人の発明も大したもんだと思った。