いつものように飲み過ぎてふらふらと歩いていると、商店街のフェンスに何か書かれているのが目に入った。
それはしっかりとした落書きで、その文言は酔った頭でも「なるほど、いいことを言うな」と思えた。
男の美学
20代30代は男に成りたい
40代50代は男でありたい
60代70代は男で死にたい
私は最後の行の年代に属する。
確かにこの年になると、「死」というものを現実として考えるようになる。
「男で死ぬってどういうことだろう」「そのためにはどうしたらいいんだろう」、それを帰りの電車の中で考えようと思っていた。
ところが、飲み過ぎがたたって、あろうことか終電で乗り越しをして、またもや駅の近くで野宿する羽目になった。
「これが俺の男の美学だ」と無理やり自分を納得させるしかなかった。
フェンスに書かれた「男の美学」