きのうの夜、上海時代からの友人と大阪市西成区の飛田新地で一杯やった。
行く店は決まって中国人女性がいる「カラオケ居酒屋」だ。
そこをはしごする途中、白いギターの弾き語りで歌っている女性を見かけた。
歌の名前は知らないが、歌声は素人のそれではなかった。
「プロってのは、こういうふうに歌うんだな」と思った。
聞けば、「野村麻紀」という名前で、普段は京都の盛り場を拠点に流しをやっているという。
気になって「流しで食べていけるんですか」と聞いてみた。
すると「とんでもない。昼間は仕事をして、夜になってから流しをしているんです」という答えが返ってきた。
やはり今の時代は、流しだけで生活できるほど甘くはないようだ。
しかし、本人の気持ちは別にして、謙虚で気さくな彼女がメジャーになることなく、その歌声がいつまでも私のような飲ん兵衛の近くにあってほしいと思った。

野村麻紀さん