真っすぐ帰ろうと駅まで行ったのだが、人身事故による1時間半の運転見合わせが終わった直後だった。
ダイヤの乱れと混雑で、そのまま電車に乗るのは得策ではないと判断した。
「一杯やっていけということだな」と思い、駅の周辺で店を探し、この店にたどり着いた。
店構えが妙にモダンで、お好み焼きというこてこての料理にマッチしない感じがした。
「うまいお好み焼きは期待できないな」と思いながら入ったのだが、これがなかなかどうして…。
私が注文したのは店の看板メニューである「なにわ焼き」だった。
メニューに「薄い生地と玉子の間に焼きそば(特製の麺)更に生玉子をはさんだお好み焼き辛口ソースが良く合います」と句読点なしで書いてある。
何のことだかよくわからない。
私が座った席から店の大将が焼く様子がよく見えたので、詳細にチェックした。
まず薄く小さい生地を焼く。
続いて卵を2つ割って薄い卵焼きを作り、それと並行してそばと豚肉を焼いて合わせる。
生地の上に焼きそばを載せ、生卵をその上に落として、卵焼きをかぶせる。
なるほど、メニューの文言の意味はわかった。
しかし、具材をごちゃ混ぜにしたようで、うまそうだとは思えなかった。
出来上がったなにわ焼きが私の前に運ばれてくる。
ソースを塗り、青のりと花かつおを振りかけて食べる。
意外なことに具材の持ち味がうまく溶け合って、なかなかの味に仕上がっている。
特に効いているのは生卵で、それぞれの具材をつなぐ役割を果たし、時に鼻に抜けるからしもいいアクセントになっている。
摩訶不思議ななにわ焼きの味だった。
古々路の「なにわ焼き」。豚は800円
飲んだのはいつもように芋焼酎の水割りだ
古々路は南海電鉄の線路沿いにある。入り口の脇に掲げられた看板の「真心をこめた一品」の文句に納得だ