私は上海で暮らしてころ、「老街(古い街並み)の撮影は自分のライフワークだ」と思っていた。
それはなぜだろうと考えたことがある。
私が生まれた昭和30年代の日本にどこか似ているから、高層ビルが次々に建設される上海で取り残されたようなエリアだから、そんなことも考えた。
でも、それはたぶん違う。
私が老街で最も引かれるのは、そこに住む人たちの生活が目の前にあることだ。
そう感じたのは、頭を洗っている人を間近に見たときだった。
老街ではほとんどの家にシャワーがない。
ということで、頭を洗うときは外の水道を使うか、やかんに湯を沸かして使うかということになる。
そんな姿を見ると、私は「人は生きているんだなあ」と感じ、「生きるって素晴らしいな」と思う。
人が人として生きている。
それが老街の魅力だ。