おとといの仕事帰り、西成まで戻ってから「雲隆」で一杯やったあと、新世界のジャンジャン横丁の裏にある路地へ行った。
お目当ての顔なじみの猫がいた。
その猫はまだらの派手な柄で、以前から「化粧をしているようだな」と思っていた。
おとといは近くに住んでいるとおぼしき人にこびを売り、頭をなでてもらったかと思うと、私が近づくとそそくさと逃げ、いつもの格子戸の家の前でおとなしい猫を演じた。
化粧をしたような柄と、その変わり身の早さを見て、「役者のようだ」と思った。
この猫にも名前を付けなくてはと思っていたが、その名は自然に「役者」となった。