きょうの仕事帰り、西成まで戻り、猫を探して普段はほとんど行かない路地まで足を延ばした。
猫をひとしきり追いかけたあと、帰ろうと歩いていたとき、鉢植えの赤い花が目に入った。
近寄って見ると「梅かな」と思うような花で、コンクリートの壁の前に置かれ、枯れた味わいを感じさせた。
「猫も猫だけど、これは撮らないといけないな。夜桜ならぬ夜梅見物だ」と、暗い路地に三脚を立てた。
めったに人が通らない路地を一人の男性が歩いて来て、「何をしているんですか」と私に声を掛けた。
私が「いや、この鉢植えの花がいい感じなんで、写真を撮っているんですよ。梅だと思うんですが」と答えると、その男性は「それは梅じゃありません。ボケですよ。梅に似ていますがね」と教えてくれた。
聞けば、鉢が並んでいる建物は銭湯で、その男性は銭湯の関係者(たぶん経営者)だという。
年配の人で、「この鉢植えはほったらかしです。私がくたばるのが先か、木がくたばるのが先かといったところですね」と笑っていた。
夜梅見物のつもりが、実際には夜ボケ見物だった。
まあ、花の名前は何でもいいので、きれいに咲いた花が見られ、見知らぬ人と話ができただけで十分だった。