きのう、西成に帰り着いて、西の空が染まるのを見たのにまっすぐ帰らなかったのは、飽きるほど撮ったからというだけでなく、猫の「夕涼み」を見たからでもあった。
木造の古いアパートの入り口の近くに2匹の猫がいて、屋外の日陰でのんびりと涼んでいた。
夕涼みはエアコンが普及して廃れた風習の一つだといっていい。
昔は夏の日の夕方になると家の外に出て、近所の人と話をしながら涼を取るという良き風習があった。
そうして時を過ごすうちに夜になり、暑さをしのぎやすくなってから家に帰ったものだ。
それがエアコンの普及で、一日中、家で過ごすことができるようになった。
最近では天気予報でも、「エアコンを適切に使い、熱中症を避けてください」なんて言う始末だ。
人の社会では廃れた夕涼みも、西成の猫にしっかりと受け継がれている。
きのう見た2匹の猫は、アパートの外で暮らしていたが、最近は中に入れてもらい「飼い猫」になった。
それでも猫は涼しい屋外がよほど好きなようで、アパートの管理人とおぼしきおばあさんが、「もう帰るよ」と声をかけても、素知らぬ様子で夕涼みの伝承に努めていた。