私が管理人を務めているマンションでは、敷地内に数多くのプランターが置かれ、季節によって花を植え替えている。
少し前に春の花として「クリサンセマム」を植えた。
この作業は私一人でやるのでけっこう大変だ。
手を泥まみれにしながらやっていると、5歳くらいと思われる女の子がお父さんと一緒に通りかかった。
その女の子は花の植え替え作業に興味を持ったようで、じっとこちらを見ていた。
私もそれに気が付いて、「お花を植えているんだよ。やりたい?」と声を掛けた。
するとその女の子はうなずいて、プランターの土を掘った穴に花を置いて、土をかぶせてくれた。
お父さんが「ひな、よかったね」と言ったので、私は「ひなちゃんっていうの。これはひなちゃんが植えた花だよ。しばらくしたら花が咲くよ。楽しみにしててね」と話した。
ひなちゃんは「うん」とうなずいた。
それ以来、そこを通るたびにその花が気になっていた。
せっかく植えた花が枯れたりしたら、ひなちゃんに悲しい思いをさせてしまう。
そんな思いで、時々水をやり、順調に育って、最近は今を盛りと花がひしめいていた。
ところが…。
きのう、プランターを見ると、クリサンセマムが上から押さえつけられたようにしおれていた。
クリサンセマムは乾燥に強い植物で、水をやり過ぎると根腐れすることがあると聞いていたので、水やりを控えめにしていた。
それが影響したのかもしれない。
しかし、元気な花もあるので、誰かが意図的にやった可能性もある。
ここに時々やって来る猫の仕業だとは思いたくないが…。
いずれにしても、ひなちゃんをがっかりさせてはいけない。
慌てて水をやり、手入れをした。
無事、元の姿に戻ってくれるといいのだが。