何もまたがない橋

数日前、昼休みに仕事場の近くを散策し、高速道路の高架下を通りかかったとき、小さな橋が見えた。

「ほう、こんなところに川が流れているのか」と、橋のそばまで行ってみると、下に水はなく普通の地面があるだけだった。

「橋ってのは、川にしろ、海にしろ、道路にしろ何かをまたぐものだろう。この橋は何もまたいでないぞ」と思った。

この日は天気がよすぎて撮りにくかったので、きのう雨の中を再び出かけた。

 

橋の欄干に「出入橋」と書かれていたので調べてみた。

橋の名は「でいりばし」と読む。

大阪港と大阪駅を結ぶ水路が明治10(1877)年に引かれ、それをまたぐ橋として建設された。

「下を船が出入りする橋」という意味で名前が付けられたのだろう。

1960年代に高速道路が建設されることになり、水路は埋め立てられたが、橋は取り壊されることなく残り、現在に至っている。

橋としての役割をとっくに終え、交通の利便性の面では存在意義を失った今も、出入橋は昔の面影を残しながら、人や車の往来を見守っている。

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出入橋とその上を走る高速道路。この上にも高速道路があって、2段になっている

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欄干の「出入橋」の表示。文字が右から左へ書かれていて時代を感じさせる。なぜ品のない緑色に塗ったのだろう

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欄干は立派な石造りで、貫禄がある

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欄干の一部はツタに覆われている

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道路は石畳になっている。橋として機能していた昔からこうだったのだろう。「この上を人力車が行き交っていたんだろうな」と想像した

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橋の両側に大きな鉄製の器具が設置されている。何に使っていたのか、ちょっと想像がつかない