けさ早く目が覚めて外を見たら、東の空に金星が輝いていた。
空は白みかけていたが、この星だけがはっきりとわかるくらいに別格の明るさだった。
さすがに「明けの明星」と呼ばれるだけのことはある。
私は小学生のころ、父に天体望遠鏡を買ってもらって星を見た。
普通の小型の屈折望遠鏡だったし、星に関する私の知識も浅かったので、見たのは主に月と惑星だった。
惑星の中で、丸く見えたのは金星、火星、木星、土星の4つだった。
小学生の私でも、金星が地球に最も近い惑星で、地球に似ていることは知っていて、人類が他の惑星に移住するならここだろうと思っていた。
本で地球と金星の公転軌道を調べ、ロケットによる飛行計画を考えたりしていた。
最近、金星が二酸化炭素を主成分とする大気に覆われ、地表の気温が400度を超え、気圧も非常に高いことを知った。
人類が住める環境ではない。
科学の進歩は素晴らしいことだが、金星の実態がわかって、昔抱いていた夢が吹き飛んでしまった。
金星は英語で「Venus」、ギリシャ神話の愛と美の女神「ビーナス」から名付けられている。
金星にはいつまでもビーナスのイメージでいてもらいたかったが…。