月曜恒例の天神橋筋商店街詣で、きのうが祝日だったので1日遅れとなった。
きょうは去年の年末からの懸案であるそばが食べたくなって、天3(天神橋三丁目商店街)で「そば屋」を探した。
けっこう歩いて、ようやく「一想庵(いっそうあん)」という本格的な店を見つけた。
そばが庶民の食として定着するのは江戸時代で、そばの屋台が大きな役割を果たしたという。
そういえば、私の好きな時代劇『必殺仕事人』でも、かつての主役、藤田まこと演じる中村主水がよく屋台でそばを食べ、そこから殺しに向かっていた。
で、江戸時代のそば屋は酒を飲むところでもあり、すし屋で酒を頼むと「そば屋に行ってくれ」と言われることもあったらしい。
「じゃ、きょうはそば屋で酒を飲もう」と思って、一想庵に入った。
そこでは思いもかけず「食は文化だ」と実感することになった。

「一想庵」。名前の由来を聞いたところ、当初は「一草庵」だったということだ。一草庵は放浪の俳人として名高い種田山頭火の終焉の地となった庵の名だ。山梨県に同じ名の店があり、「変えてくれ」と言われて、同じ音の一想庵にしたという。ここですでに文化の薫りを感じた

店頭の品書きにも、「蕎麦屋酒もお楽しみ頂けます」と書いてある。望むところだ

店内は狭いながらも高級感がある。値段も決して安くはなく、私にとっては分不相応だったが

お気に入りの日本酒である石川県の「天狗舞」(税込み700円)があったので、注文した。東京で仕事をしていたとき、あるイベントでこの酒を飲んで、そのうまさに驚いた。そのときの味にはきょうも出合えなかったが

つまみは「えび豆」(税込み500円)。琵琶湖の小エビと大豆を炊き合わせた関西伝統のつまみだということで注文した。小エビの味の深さに驚いた

いよいよ真打ち登場。そばにしてもうどんにしても、麺のうまさを純粋に味わうなら冷たくてシンプルなものが一番だと思っているので、「もり蕎麦」(税込み800円)を注文した。そばは福井県大野市で去年の11月に収穫されたものだという

気取ってこだわりの食べ方をしてみた。昔、落語でそばの食べ方を講釈しているのを聞いた。「そばってえのはな、つゆにざぶっと漬けちゃいけねえんだよ。そばの先をな、こうしてちょっとだけ漬けるんだ。まずいだろ。そう、まずいんだ。けどな、それが江戸っ子の粋ってもんだ」。そんなくだりだったと思う。その講釈の通り食べた。すると、確かにまずいが、そばのほのかな味と香りが舌と鼻で感じられた。粋な食べ方だと感心し、ここでも文化を感じた

最後にそば湯が出てきた。大学に進学して、東京で初めてそば屋に入ったとき、そば湯が出てきた。中をのぞいたら、白濁した湯が入っていた。何に使うのかわからなかった。その後、そばのつゆを割って飲むためのものだと知り、それからはそば湯が来るのが楽しみで、つゆを多めに残すようになった。これもひとつの文化だなあ