クロはいた。
けさも西成へ行って猫を探したところ、クロはもともとのすみかである公園の脇でこれまで通り暮らしていた。
しかし、クロには大きな変化があった。
クロは「さくら猫」になっていたのだ。
さくら猫は不妊手術を受けた猫のことで、その印として耳の先端をV字にカットされる。
カットされた耳の形がさくらの花びらに似ていることからその名がある。
実は、クロが不妊手術を受けるという話は以前から聞いていた。
老夫婦に引き取られるという話も聞いていたので、引き取り手が連れて帰ってから手術を受けさせるのだと思っていた。
ところが、実際には引き取り手は確定しておらず、今回の手術はボランティアが費用を負担したということだった。
なにはともあれ、さくら猫になったことで、クロは野良猫としての市民権を得たわけだ。
しばらくは、これまで通りクロが私の遊び相手になってくれそうだ。