きょうは仕事が終わってから、近くの黒崎町公園の周辺へ行った。
きのうからの忙しさのため疲れ気味で、近場で猫の写真でも撮れればと思っていた。
しかし、猫は見つからず、近所の女性に「何してるんですか。怪しいですね」と、あらぬ疑いをかけられる始末だった。
なんとなくつきのなさを感じて、公園のベンチに座ってどうしたものかと考えた。
そのとき、赤いブランコがわずかに揺れているのが目に入った。
昼間は何とも思わないブランコが、夜は何かを訴えているように見えた。
頭の中にはビリー・バンバンが歌う1969年のヒット曲「白いブランコ」が流れていた。
「君はおぼえているかしら。あの白いブランコ」の歌詞で始まるこの歌は、私の若いころの十八番だった。
公園のブランコは赤だったが、白いブランコの歌のイメージに重なった。
ブランコといえば、日本映画の巨匠・黒澤明監督の名作『生きる』だ。
映画の中で、志村喬がブランコをこぎながら「いのち短し、恋せよ乙女」と歌うシーンは、映画史に残る名シーンだとされる。
公園にあるブランコにはなぜか哀愁がただよう。
私も「白いブランコ」を歌っていた若き日に思いをはせた。
思い出にふけっていた私の前に突然、幼い女の子が現れた。
「何してんの」とレンズをのぞき込み、ブランコに乗って元気いっぱいにこぎ出した。
聞けば5歳だという。
私の妙な郷愁は、孫のような女の子にあえなくかき消された。