中国写真館その31 陽澄湖の恵みとともに

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東陽澄湖で舟を操る丁風霞さん

上海蟹の聖地・陽澄湖の蟹はそのほとんどが養殖されたものだ。

それでも、数は少なくなったとはいえ、湖に舟を浮かべ蟹の漁をする人もいる。

2010年に陽澄湖を訪ねたとき、1人の女性漁師・丁風霞さんに出会い、舟に乗せてもらった。

 

陽澄湖の湖沼群の一角をなす東陽澄湖、丁さんはそこで昔ながらの手こぎ舟を操り、上海蟹の漁をして暮らしていた。

丁さんの朝は早い。

風の具合によって変わるが、遅くとも午前7時すぎ、早い日にはまだ夜の明けない午前4時に湖に出る。

 

上海蟹の漁は朝のうちに網を湖底に沈め、夜になって引き揚げる。

北西の風の日が漁に適しており、そんな日は70匹から80匹の蟹が捕れることもあるという。

風向きの悪い日はそれが十数匹にまで減る。

運がいい日には、日本で高級食材の1つとなっているスッポンが網に掛かることもある。

このエリアの名物料理にもなるエビやタニシの漁もする。

丁さんの暮らしは湖の恵みとともにある。

 

丁さんが上海蟹の漁を始めたのは1990年代の中ごろのことだ。

それまで勤めていた衣料品関係の会社を辞め、舟を買ってこの仕事を始めた。

「会社勤めは性に合わないのよ。この仕事は自由でしょ。人に管理されていたころ感じたストレスも、この仕事にはないわ」と、丁さんは笑顔で語った。

 

そんな丁風霞さんは、今も元気に陽澄湖で漁を続けていることだろう。

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湖で漁に励む丁風霞さん

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網に掛かった上海蟹。天然物なので、いきの良さは折り紙つきだ

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前日の夜に引き揚げた網に掛かっていたスッポン。売り値は1匹260元(当時のレートで約3000円)だった

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小さなエビも湖の恵みだ。買い手はすぐにつくと丁さんは言っていた

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湖岸に舟を留め蟹を売る丁さん。この姿を見て、声をかけた。「どうせだめだろう」と思っていたが、「乗せてあげるわよ。あしたの朝、ここに来て」とあっさりOKが出た